勝浦川流域ネットワークの活動紹介(1998年〜2003年)
1. 勝浦川流域ネットワーク誕生と趣旨
  • 勝浦川流域ネットワークは、徳島県の「共生塾」で知り合った流域2市2町の住民を中心に自主的に発足。
  • 1998年2月22日に「森は海の恋人」の畠山重篤さんを講師に迎え、「森と海と人と…いま始まる勝浦川流域ネットワーク」と題して勝浦町農村環境改善センターで産声をあげました(当時の会員は約70名)。
2. 理念(趣旨)
  • 川は、太古の昔から人々がかかわるなかで、文化や風土を育んできた。いわば人の生活の中心に川がありました。
  • 勝浦川は、雲早山の東斜面に源を発し、上流部の上勝町、中流部の勝浦町、下流部の小松島市を経て、徳島市南部に注ぐ全長49.6q、流域面積 224平方キロメートル、流域人口2万6千人の川です。近年は流域の住民による川を通したさまざまな交流やまちづくりの関心が高まっています。
  • そこで、勝浦川流域の人々によるゆるやかな連携をつくり、それぞれが課題を持ち寄り、より多くの人が参加し、できることから実行して勝浦川とのかかわりを考えたいと思います。
3. 活動方針
(1)流域の交流
・ 誰でも参加できる楽しい活動にしたい。そのため、企画は誰でも立案でき、「この指とまれ」で集まってきた人たちによるプロジェクト方式で実施します。ただし、活動が会の趣旨に合致するかどうかは、みんなで話し合います。このような方式で、上流と下流、若者と高齢者など、さまざまな交流を図ります。
(2)川の生態系を保全する
・ 自分たちの身近なところを流れる川を見つめることで、環境問題への手掛かりとします。ボランティア活動や勉強会を通して共に学び、健やかな川を未来に手わたす活動を行います。健やかな川とは、生態系の営みが豊かな川のことです。

4. これまでの活動紹介
(1) 源流域での植樹(1999年4月〜)
  • 上勝町市宇集落の人たちとともに名有林に広葉樹の森をつくろうと、ケヤキ等約700本を上下流合わせて約80人で植樹。その後の手入れなどでケヤキは順調に活着していることがわかりました。この森は「市宇ゆめの森」(おむすび山)と名付けられました。
(2) 里山の学校〜どんぐりプロジェクト(2002年4月〜)
  • 上勝町福川の里山にドングリの種を蒔きました。ねらいは、植樹に備えて地元産のドングリ苗を育てること、里山での遊びを子どもたちに体感してもらえる場所(上勝ダッシュ村)をつくることでした。
(3) 源流探索(1998年11月)
(4) 棚田の学校(1999年4月〜)
  • 上勝町の天上の楽園とも呼ばれる市宇集落を舞台に、地元の人たちと、下流の人たちが棚田での田植え、茶摘み、草取り、稲刈り、収穫祭等を通じて、人と森が一体となった里山のくらしを体感していただき、棚田や里山の役割について考えるきっかけとなればと始めたものです。
  • 参加者全員で地元の雑穀、山菜、野菜、棚田米を使用して昼食をつくるというのも好評。
  • 最初の参加者は3人でしたが、いまではインターネットを見てやってくる京阪神からの参加者を含めて30〜50人の参加があります。
(5) 水生生物による水質調査(1998年8月〜)
  • 中流部の勝浦町で毎年8月に水生生物の調査。水に棲む生き物を調べることで水質判定をしようとするもので、専門家である杉本秀司さんら(会員)による指導を受けながら実施しています。
  • 時節柄、水遊びと夏休みの宿題対策を兼ねて、子どもが主人公の行事ですが、子どもたちは毎年楽しみにしています。このような定点観測を続けることでデータを蓄積でき、川の環境変化を知ることにもつながります。
(6) 山の子どもたちに海を〜「勝浦川ジュニア海へ」(1998年7月)
  • 徳島市漁協の「津田とれとれ市」は、その日に水揚げされた新鮮な魚の即売市です。そこを訪れたのが、上流域の上勝町、中流部の勝浦町の子どもたち。普段海をあまり見ない上流の子どもたちは、たくさんの魚を見て歓喜の声を上げていました。
  • グループに分かれてお小遣いで魚貝の品定め。稚魚の放流、ヒラメの養殖場の見学をしました。その後大神子海岸へ移動し、自分たちが買った魚を自分たちで調理しました。上流の子どもを下流へというねらいでした。いまもってリクエストの多いイベントです。
(7) 河口に目を向けよう〜「干潟観察会」(1999年9月)
  • 葦に囲まれた泥地が点在する勝浦川河口の干潟には、片手が大きいシオマネキをはじめ、たくさんのカニが生息しています。
  • そこで学芸員の田辺力さんを招いての干潟観察会を開催。多様な生き物が棲む干潟の役割に目を向けるきっかけとなれば幸いです。また勝浦川河口干潟は、豊かな生態系を持つとの専門家の評価があります。
(8) 講演会、研修会、パネル討論、ワークショップ等の開催
  • 「森と海と人と…」(1998年2月=創立イベント)
  • 全国豊かな海づくり大会参加(1998年10月)
  • 「川はまちのおもしろ学校」(1999年3月)
  • ブナの森の総会(1999年5月)
  • 「勝浦川クリーン大作戦&ミニコンサート」(2000年5月)
  • 「春だ集まれ!どんぐり広場」(2001年3月)
(9) 千年の森「高丸山」との関わり
  • 徳島県が進めている「千年の森」構想に上勝町の高丸山が選定され、各種の事業が計画されています。森づくりに関して、流域の団体ということから参画を予定しています。

5.今年度の重点テーマ「ビオトープネットワーク構想」と「ビオトープの学校」

(1) 流域を森でつなごう
  • わが町に森をつくろう。子どもたちが遊び、大人が憩える森を。
  • 苗を育て、苗木を提供し、勝浦川流域をケヤキや広葉樹の森にしよう。
  • わが家の庭から始めよう。やがてそれが並木となり森につながる。生物が移動できる自然。点から線へ、線から面へとつないでいく。
  • 生き物の棲める空間をつくる。森でつなぐ。ビオトープでつなぐ。
  • 「ネットワークビオトープ」。ビオトープの復元、再生、創造へと。名付けて「ビオトープネットワーク作戦」 。
(2) 実現には(アイデアいろいろだけど…)
  • どんぐりマップを作ろう。
  • 生態系マップを5千分の1で作ろう。体育館に大きな地図を並べて、子どもたちと作業。生態系の勉強も。
  • 流域の子どもたちに夏休みの宿題を出してみては。
  • 森と川と家並みが続く。そんな場所を、子どもたちに絵に描いてもらおう。地域で眠らせている才能を発掘ができるかも。
  • コンテストをして展示会をしてみよう。
(3) 地元の人に身近な環境の価値を知ってもらおう〜ビオトープの学校の創設
  • 年間プログラム(別添参照)を計画し、この1年でビオトープについての基本が理解できるように留意しています。
  • ビオトープに関しては、「つくる」ことを目的としたり、開発の免罪符のように捉えたりしがちですが、まずは身近な環境の価値をそこに住む人が気付くこと、知ることがもっとも大切ではないかと考えています。
  • そこで、日本生態系協会の関事務局長のお話を伺って方向性を定め、ビオトープの先進地(発祥地)、ドイツの事例をドイツ副総領事シュペート氏を招いてキックオフとし、県内で実践しておられるビオトープアドバイザーを講師に迎えて始めました。
  • 勝浦川流域を森でつないでいくうちに点の活動がつながって見えてきます。勝浦川河畔が森に包まれれば治水も利水も大丈夫。人々の気持ちも暮らしも豊かになるかもしれません。
  • 百年後には河畔林に包まれた勝浦川になることを目指す遠大な計画ですが、そのためには大勢の人たちをまきこんで計画的に進めていく必要があります。

[写真/ビオトープの学校の模様]

◆ 勝浦川流域ネットワーク
◆ 代表  谷崎 勝祥
◆ 副代表 米田 潤二、谷口 右也
◆ 事務局 平井 吉信
http://www.soratoumi.com/river/ryuiki/index.htm  
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