台風10号を検証する

2004年7月末から8月上旬にかけて、徳島に記録的豪雨をもたらした台風10号について、簡単な検証を試みます。

(1)観測点ごとの降水量
・降雨量はどこでも計測されるのではなく、気象庁の観測地点(アメダス)で計測されます。今回の台風による観測点ごとの降水量は以下の通りです(徳島地方気象台観測)。
http://www.osaka-jma.go.jp/tokushima/topics/ty0410/ty0410.htm
・神山町では、降り始めから1200ミリを越える雨量を観測しています。

(2)観測地点と降水パターンの吟味
・台風の進路から見て、分水嶺の南斜面に降ったことは明らかです。従って、降雨量データを読むときに、そのことを勘案する必要があります
・県内の降水量分布から、県南あるいは中部山岳に大量の雨をもたらしていますが、そのなかでも、旭丸(神山町)、福原旭(上勝町)、木頭(木頭村)が示唆的です。

1)旭丸(観測地標高1200メートル)
・神山町と報道されたのは、観測地点名「旭丸」です。すぐ近くに旭が丸という山があるので、そこが観測地点だと思われがちです。しかし観測地の緯度、経度から見ると、鮎喰川源流域の雲早山に近い、北面の尾根付近だとわかりました。
・雲早山は、神山町(鮎喰川流域)、上勝町(勝浦川流域)、木沢村(那賀川最大の支流、坂州木頭川流域)を分けている分水嶺です。
・神山での観測地は、南斜面に降った降雨パターンから考えると、南面の木沢村、上勝町に流れたと見ていいと思います。その証拠に、神山町(鮎喰川流域)での被害はありませんでした。

2)福原旭(観測地標高290メートル)
・勝浦川最大の支流、旭川の川沿いの右岸、北斜面の川に近いところです。

3)木頭(観測地標高330メートル)
・木頭村の中心地である出原地区の那賀川沿いの北岸です。

観測地点と木沢村付近の地図

福原旭、木頭とも、川沿いの標高の低い北斜面です。距離を隔てながらも地理的に良く似ている2地点の降雨量が900〜1000ミリあったということは、丹生谷地区(那賀川上流の総称)から上勝地区にかけての広い範囲で降雨量があったということになります。

これに対して、北向きの尾根に近い旭丸で1200ミリを記録しているわけですから、南向きの尾根では、それ以上に降った可能性があります。雲早山の南斜面に位置する木沢村の降水量は、観測地点がないため発表されていませんが、多いところで1200ミリを越えていた可能性があると判断できます。

(参考動画)
・徳島市最南端の飯谷地区にかかる潜水橋(勝浦川)の模様。水量はほぼピークに近い。2MB(wmv)

被害に遭われた地域の一日も早い復興、みなさまのご無事をお祈りいたします。