新日本紀行に思う〜生きることがすでに祭り
小学校のころ、
もっとも好きなテレビ番組と聞かれたら、
NHKの「新日本紀行」と答えていた。
あの富田勲のテーマ音楽が流れてくるとぞくぞくとした。
月曜日の夜7時半はテレビの前で待ちかまえた。

高度経済成長期の日本は、
それまでの歴史にないものを数多く生み出した輝かしい時代。
しかしそれと同時に大切なものを数多く失った。

そんななかで懸命に生きている人々とその風土が紹介される。
急激に日本が変わりつつあることを
小学生のぼくは感じていたのだと思う。

この番組で紹介される日本はどこか懐かしくほっとする。
国を背負うという気概が一人ひとりに感じられた時代だった。
ぼくはそんな地域をつくりたい。
四国人はそうするべきだとの思いが10代の頃から消えず、
ますます強くなるばかり。

新日本紀行は、富田勲のテーマ音楽で始まる。
拍子木がカチッと鳴り、
主旋律が上向し対旋律が下降していく瞬間、ぞくぞくする。
わずか1分弱の音楽なのに、
これほどこの時代の日本を表現した音楽はないのではないか。

小学生のぼくは、地理が好きで、
もう世界地図や日本地図は宙で描けたし、
国内外の主な地形は頭に入っていた。
ボリビアの首都はラパスで年平均気温が13度の常春紀行ということさえ知っていた。

川が好きだった子ども時代。
地図を見ては、この川はどんな姿をしているのだろう、
川幅はどれぐらい? 水深は? 川沿いにはどんな人が住んでいるのだろう?

そんなことが知りたくて自転車で地図を確かめに行った。
もちろんそれは、小学生が自転車で行ける範囲。
それに加えてたまにドライブに連れて行ってもらったときに見る風景の川。
それらがぼくにとってのすべての川なのだけれども。

そして21世紀。
ぼくは思う。いまの日本に必要なのは祭りだ。
それも人に見せる祭りではなく、一人ひとりが生きる祭り。
年に1度の祭りがあるから、また1年を生き抜くことができる。
それが祭り。

生きることがすでに祭り。ぼくは祭りが好きだ。


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