インプレッサ〜地味だけれど目に見えない基本がいいクルマ

 インプレッサを選んだのは消去法から。価格の割にしっかりした足回り、運転がうまくなったかのような思った通りに曲がる性能(ハンドリング)、剛性が高く安全性が高いと思われる車体、それでいて手頃な価格から1.5のインプレッサを2001年3月に購入し、今月(2006年10月)で10万キロを越えた。色はWRブルーマイカ。当時はあまり見かけなかった深く鮮やかな青だが、いまはどこのメーカーにも設定があるようだ。

 クルマは、気に入ったクルマを長く乗る。VWゴルフ(新車) 1.8マニュアルを10数年乗り、それからマーチ(いまは妹が乗っている)。安全運転を目標としながら日々運転している。


(写真/海部川の支流に降りてみる。小さな流れと広い河原―不思議な空間だ)

 

 乗り始めてからもインプレッサには思い入れはなく、高速道路や悪天候時でも安心して走れ、安い割に良い足回りのクルマという印象だった。しかし年月を経て良さがだんだんわかってきた。剛性が高いせいか10万キロを越えても車体のヘタリ感はなく、ブレーキパッドも交換していない(ディーラーに交換を求めたが、まだだいじょうぶとのことだったので)。先日、タイミングベルトを交換したばかり。プラグはまだ変えていない。燃費はここに来てさらに伸びているようだ。

 

 仕事で遠出する機会も少なくない。そんなときに景色のいい海辺や快適な山岳ルートを運転するときは朝からわくわくする。これは、インプレッサ以外では感じられない喜びだ。買う前には、カローラ、シビックなど納得がいくまで試乗したが、どれもハンドルを切る感覚が頼りなくて、いのちを預けられないと感じた。


(写真/徳島県南部の県道。仕事で遊びでときどき走る好きなみち。ここの下りで風、海との一体感を感じて心から癒される)。

 

インプレッサなら、誰が運転しても時速50〜80キロのカーブで思った通りのラインを描けそうな気がする。ところが他車はハンドルを切って車の向きが変わったことでハンドルを切った感じを掴むとでもいうような、手応えがわかりにくいハンドリングなのだ。特にトヨタには改善を望みたい。

 私事だか、半年ほど前に、対向車右折車両と、その曲がり先の脇道から突然飛び出した車両にはさまれて大事故を覚悟したことがあった。とっさにブレーキとハンドルを操作してそれぞれ10センチぐらいの隙間を抜けて事なきを得た。脇道から車両が出てくることに対して心の準備ができていたこともあるが、これがインプレッサでなかったから、とてもこうはいかなかったと思う。市街地を流すだけなら関係ないが、クルマを乗っていて何度か遭遇するかもしれない事態にどう対応するかは大切だと思う(だからミニバンは乗らない)。インプレッサには、ぶつかることを回避しようとする能動的、積極的な安全への思想が織り込まれているように思える。これも長く乗ってみて感じたことだ。

 さらに美点を挙げるとすれば、運転しやすく、車体をコンパクトに感じることである。競合他車は、前ガラスが寝ているので頭をぶつけそうな圧迫感があるし、前のピラーが右前方の視界を遮って安全が確認しにくい。カローラを乗る人はクルマに多くを求めず日常の足として乗るというが、それならばメーカーはデザインよりも実用性に徹したほうがいい。旧型カローラ(2000年〜2006年)の視界が良くない点については、ユーザーの声が多く寄せられたのか、新型カローラ(2006年10月〜)では(依然として前ガラスは寝ているものの)、ダッシュボードを下げ、A ピラーを細くしたことでやや改善された。乗り比べると、インプレッサは依然として1.5クラスのなかでもっとも視界が確保しやすく、車幅感覚も掴みやすいと思う。

 運転席に座ったときにポジションが決まるのもインプレッサだ。これは大切なことだ。ハンドル、アクセル、ブレーキ、シートの配置が絶妙で身長176センチの自分にはしっくり来る。またまたカローラの話で恐縮だが、先代カローラは、これがダメで、いったいどこをどう動かしたら運転しやすい位置関係になるのか戸惑ったが、現行型では、これが解消されている。
 インプレッサに長く乗って飽きないのは、カタログにうたわれていないこうした基本がきちんとできているからだろう。長距離を乗っても疲れないしっかりとした乗り心地の良さとも相まって、6年を経ても運転する楽しさを毎日教えてくれている。

 

 このクルマ(1.5シリーズ)の欠点は(誰もが認めるであろう)加速である。特に発進時、高速で上り坂にさしかかったとき、重い車体に非力なエンジンの組み合わせなのでもたつく。エンジンはよく吹き上がるが、追い越しのときに回転数が上がっても加速感がない。
 しかし加速のいいクルマは飽きやすく、遅いクルマには慣れるということもある。むしろ足回りがしっかりしている(ラリーの仕様と基本的には変わらないという)のだから、エンジンパワーをなんなくいなすため、安全性は高いと開き直る(笑)。
 ただし一定速度の巡航運転なら痛痒は感じない。突き上げを吸収し、よく締まった設定のサスペンションと相まって気持ちよく滑っていく。でも、このクルマ、やはり1.8ぐらいの経済エンジンが欲しいところだ。


(写真/南国徳島といえども、年に数回雪が積もる。それを見計らって山に登ってみる。しんと静まりかえっていた)

 鈍い加速対策としては、アクセルを踏みこむのではなく、適切なギアを選ぶ。例えば、4ATなら上り坂で3速に落とす。渋滞の市街地も3速固定で軽快に走れるし、変速機が無意味なシフトアップをしない分(そうなるとシフトダウンが頻繁に起こる)燃費もいいのではないか。2速で走る山道(ワインディングロード)は低速なので加速は気にならない。
 不要な加速をしないためには、予測運転が重要となる。前方に赤信号や渋滞列があれば早めにアクセルを離す。流れているときも周囲の交通状況を見ながら一定の速度を保つ。流れを乱さず、無駄な加速をせずの絶妙のバランス(=アクセルワーク)がある。それを会得すると燃費は1〜2割は伸びるようだ。

 スバルは燃費が悪いという声がある。そこで、客観的なデータを示しておきたい。下図は、2006年1月〜10月の燃費記録であるが、この間の平均では14.0q/リットルである。燃費の要素は、カタログ数値よりも、車重と排気量の関係、運転方法によるところが大きいように思う。


(空色は12キロ/リットルを下回ったとき。橙色は、15キロ/リットルを上回ったとき)

 装備は買ったときのままである。オイル交換は、8千キロぐらいでメーカー純正を、車検もディーラーで行う。燃費向上グッズの類は使っていない。運転は、早め早めに予測運転を心がける。周囲の流れを乱さない程度にゆるやかに加速していく。これは燃費向上に寄与していると思う。それでも平均的な流れよりやや早い。

 後ろに車両が並ぶような運転は流れを阻害するある種の迷惑行為だと思っている。これは道路の効率的な活用(粗密を平準化する)の点からも好ましくない。さらに、「追い越しをかける」「かけられる」がひんぱんに発生することから危険度が高まる。

 運転時の交通状況は、まちなか4割、郊外3割、高速3割。そのうち渋滞走行は全体の2〜3割といったところ。ガソリンは出光のレギュラーを入れている。

 来年(2007年)夏ともいわれる次期インプレッサに望むことは(WRX仕様は別として)、全高を2〜3センチ高くして着座位置を上げ、ホイールベースを数センチ伸ばしてオーバーハングを短くするなどユーティリティーの改善。基本的な設計思想は踏襲すること。できれば1.8〜2.0の自然吸気エンジンを設定し、エンジン改良等による排ガス対策や中低速トルクアップなどの運転性改善、燃費改善を行う。さらにそのエンジン特性に合った4〜5ATもくしはCVTを新設すること、オーディオレスの設定を設けること、などである。

 仕事がうまくいったときの高速を帰路につくときのインプレッサは雲の上の絨毯のごとくフラットである。休みの日は、好きな音楽を聴きながら四国の自然に寄り添うようにおだやかに走る。曲線をなぞる楽しみも味わいながら。


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