泡盛の香り、柑橘類の涼しさ 
沖縄でタイ米を黒麹菌で発酵、蒸留させてつくる酒を泡盛という。

戦前には百年を越える古酒(クース)も存在したというが、多くの酒造所が太平洋戦争で焼け、古酒も失われたという。戦後は占領軍の影響からかウィスキーが全盛となり、泡盛は沖縄の人々にさえ見向きもされなくなった。ぼくの愛読書のひとつ、岡本太郎の「沖縄文化論〜忘れられた日本」を読むと、彼が沖縄を訪れた頃は、泡盛を探すのに苦労したという。

そんななかで泡盛を愛する人たちの努力により、ここ20年ぐらいでようやく沖縄でアルコールの主流となった。今では、47の酒造所で年間2万キロリットルを産出するようになった。しかし小規模の酒造所が多く、波照間島の「泡波」のように、生産量が少ないため主として島内で消費されるために、内地では数万円の値段を付けるものもある。

近所の酒屋に行くと、10種類〜15種類が並んでいる。どれを選ぶか、何を基準にすればいいのかわからないから適当に買うことになる。

最初に買ったのは「残波(黒)」。「おっ、泡盛っていける」と思った。次に買った「残波(白)」は、さらにいい。残波(白)は、もっとも売れている泡盛と言われている。伝統的な泡盛に対し、すっきりまろやかでクセがない感覚を打ち出すことで若者を中心に人気が出た。泡盛ではないが、すっきりして香り立つ鹿児島の西酒造の芋焼酎「富乃宝山」を思い出す。

次に「久米島の久米仙」の「び」を買った。これも手軽に買える泡盛だ。「残波」は透明感があってロックにしてもいいけれど、旨味や香りを追求している泡盛ではない。「び」の瓶を開けた途端、すぅっと果実のような米の香りが立つ。久米島の名水を使用し、無添加がつくられている。

これに梅酒を少し垂らして氷を浮かべ、適度に水で割るとおいしい健康ドリンクになる。久米島の久米仙は気になるブランドだ。わざわざ「久米島の久米仙」という会社名とブランド名があるのは、沖縄本島に「久米仙」というブランドがあるからだ(そちらはまだ試していない)。

ぼくが気になっているのは、
「久米島の久米仙 白 古酒12年」
「春雨 8年〜15年年古酒」(宮里酒造所)
「暖流5年古酒」(神村酒造)

もちろん、これ以外にもぼくの知らないいい銘柄がたくさんあるに違いない。上に挙げた辺りは本土の酒屋でも探せば手に入る銘柄だと思う。

泡盛は何にでも割ってみるといい。麦茶と割ってもよし。先に挙げた梅酒のように柑橘系を加えるのがいい。柑橘系といえば、四国ではユズがある。ゆずにハチミツを加えた飲料を、(株)きとうむらでは「ゆずみつ」、上勝農協では「彩んく」、馬路農協では「ごっくん馬路村」などの商品名で売っている。これらを泡盛で割って氷を浮かべれば、すっぱさを泡盛が引き立てながら中和し、ほどよいアルコールも楽しめる。クエン酸の補給という点で夏バテ防止に恰好のドリンクだ。

カルピスを泡盛で割ってみたいと思い、なじみのスーパーの店頭に、カルピス季節限定の「沖縄パイナップル」が並ばないか、いつも通っている。今年は「さわやか白桃」がそれに代わったのかもしれない。

夏川りみの「空の風景」を聴いて、泡盛を少しずつ飲む。ニガウリも手軽に入手できるようになったから、まずはゴーヤチャンプルーで。沖縄料理ではないが、アーモンドや利尻昆布を納豆昆布にしたものもいい。

そうするうちに、泡盛のおいしい飲み方を発見した(と自慢するようなものではないが)。それは、びに残波を加えるというもの。残波は単独でももちろんいいが、なにか芳香というか豊潤な感じを付け加えたい。びは、芳香とやさしさはあるが、そこに硬質なうまみを加えたい。

それなら両者を混ぜればいい。残波を今風の美少女とすれば、「び」は、純朴な天然少女といった感じ。「び」に残波が加わった途端、やわらかな風味に透明な甘みが加わり、オリジナルとは違う魅力が出てくる。

最初はロックで飲む。途中から水で割る。飲み飽きないし、するりと吸い込まれていく。この2つは値段が手頃だからいいし、量産されているから本土の人が大挙して求めても沖縄や八重山の人たちに迷惑はかけない。

泡盛がうまいから、ビールは止めようかと思う。ビールは最初のひとくちはいいが、あとはもう少し。炭酸+アルコールののどごしの快感はあっても、そのあとは喉の渇きと苦みに悩まされる。銀河高原ビールのような麦の果実酒のような味わいならいいが、大手メーカーの量産ビールは(ファンの多いエビスも含めて)やはり量産ものの限界を越えることはできない。

それに比べると、泡盛はさまざまな楽しみがある。単酒のロックよりもブレンド酒のロック、それを水で割、さらにルイボスティーで割れば、さらに新しい世界が開ける。

実はまだ沖縄へ行ったことがない。八重山(やいま)へ行ったみたいと思っているけれど、時間を捻出できないでいる。9月にはぜひ行ってみたいと思っているが…。


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