御獄と神がかり
御獄(うたき)の存在に戸惑った。御獄は、神への感謝を表す場所で地区の人たちの大切な場所として外部の者が理由なく足を踏み入れるところではない。ところが鳥居があって御獄の表示があればすぐにそうだとわかるのだが、なかにはわかりにくい御獄もある。そこで地図を見ながら注意して進むのだが、なかには観光地やトイレに隣接している御獄もあって、何度か足を踏み入れてしまった。ぼくの頭のなかには聖地に隣接してトイレはないだろう、観光地の御獄なら観光客向けに注意書きがあるだろうなどと思ったがそうではない。御獄に存在するものは、石ころひとつ、草花ひとつ触れてはならない。外から眺めるのには差し支えはないが、御獄かなと思ったらその辺りにいる人に聞いてみることが必要かもしれない。

沖縄の人たちは精神世界に近いところにいる。十年ほど前、NHKが「脳と心」というドキュメンタリーをシリーズで放映した。そのなかで沖縄に住む神がかりの女性が映し出された。宮古島のユタ、根間ツル子さんである。ひとの日常生活では脳の安定化装置が働いているため、日々の暮らしに適応できるのだが、それが試練やさまざまな経験を経て狂気にも似た精神状態に置かれる。それを沖縄では「カミダーリ」と呼ぶ。自分ではどうすることもできず意識と無意識が切り替わる変性意識状態に陥るのだが、そこから別の人格(神がかり)の自分がしゃべりだす。沖縄にはノロ、ユタといった巫女がいるが、日常の暮らしで沖縄の女性がなにを感じ、それをどう表現、行動していたのか。つまり風土を知らずして巫女に思いをはせることはできない。



△戻る
Copyright(c) Soratoumi, All rights reserved