ですね、しましょうね
石垣空港から港までのバスは運転手が停車地を案内する。港からは離島に向けての定期船が運行されているので石垣の陸と海の玄関をやや回り道をしながら約20分でつなぐ路線である。バスの運転手の帽子にはハンドマイクが付いており、運転士ながらしゃべれる。バスから出るときは帽子をバスにかけて降りる。その運転手が、「次は日航八重山ホテルですね」と言った。これには驚いた。さすが南国では運転手もDJ、観光案内をするのかと思った。

この案内のどこに違和感があるかというと、例えば、新幹線に乗っていて、「次は大阪ですね」などと車内アナウンスがあるようなもの。語尾の「ね」は親しい呼びかけのようなものと理解すると、耳に心地よいことに気付いた。

「ですね」はどこでも普通に聞かれた。釣具店で買い物をしても飲食店でも「五百円ですね」という反応。なにか他人事のように思えて、その実、お金をいただくことに対するある種の謙虚さを感じる。


離島桟橋の交差点には、「コンビニシーサー」というここにしかないコンビニがある。品揃えも一般的なコンビニながら観光客を意識したみやげ物が並ぶ。名前のようにシーサーの置物があるのには驚いた。離島桟橋近くという立地とも相まっていいアイデアではないだろうか。離島桟橋を利用する観光客には何度か通った人もいるだろう。桟橋前にある中村つりぐには、弁当やサーターアンダーギーまである。


八重山での商売は温度差がある。接客に気を配った店と、看板やガイドブックに書いてあるのにもかかわらず、店の人が「そうでしたか?」などというところもある。話しかけても黙ったままですぐに答えが返ってこないこともある。なにか気に障ることを言ったのかと不安になるが、しばらくすると、ここはこうだ、あれはこうするというような声をかけてくれる。八重山時間というのは、1〜2時間と言われているが、コミュニケーションのタイムラグも感じられる。

商売としては、島時間ともいうべきゆったり感をどのようにしたら表現できるか、伝えられるか。例えば、意図的にゆったりと「おーりとーり」とかけ声をかける。あとは接客には構わないでセルフに任せる。それを意図的に徹底して行うことでイメージをつくる。ところが八重山での商売は、地域性を理解してくれという努力もなく、単なる怠慢の店も少なくない。これは、八重山に限らず、全国どこでも共通だけれど。

おーりとーり(いらっしゃい)…気持ちを込めた八重山の言葉である

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