ういろうは海部のスイーツ、ほんのり甘いおかあさんの味
ういろうは、徳島県海部郡の南部の家庭で親しまれてきた。
旧町名でいえば、牟岐、海南、海部辺りだ。
海部川河口に広がる白砂青松の大里松原では
旧暦のひなまつり(4月3日頃)に弁当をつくって浜へ出かける。
弁当には、巻き寿司、魚の押し寿司、卵焼きなど。
おやつとして、水ようかんやういろう。
一家総出でお重に詰めて遊山箱を下げて出かける。
そんな浜節句を大人も子どもも心待ちにしていた。
大人は漁に出るのを休んで素朴な手料理を肴に酒を飲む。
子どもは浜節句のういろうをほおばる。
ういろうは家庭の手作りおやつでしかも家によって味が異なる。
浜節句のときは、よその家の重箱を覗き込んで食べ比べをしたという。
しかしこの頃では浜節句をする家庭は少なくなり、
浜節句に外食で済ませることも増えてきた。
ういろうをつくっているお菓子やさんは、地元で数件ある。
会社として製造しているところもあれば、
おかあさんがひとりで副業としてつくっているものもある。
今回紹介する鶴和商店のういろうは、
マキを割って釜で蒸す製法を取っているところが特徴だ。
マキを割ってレンガの釜に火を入れる
北海道産の小豆を釜に入れて炊き、
頃合いを見計らって「びっくり水」をさす。
そうして最初の灰汁(あく)を取る。
家庭のういろうでは灰汁を取らない家もある。灰汁のなかにはうまみや滋養成分もあるからだ。
鶴和商店では、あっさりした感じに仕上げるために灰汁をていねいに取り除いているが、お客様からのご要望があれば、灰汁を取らない濃厚な甘みをお楽しみいただくういろうを用意することも考えている。
炊いてやわらかくなったら、あんこをつぶして小豆の皮を取る。
あんこづくりには、餅粉、米粉、塩、上白糖。
それにオリゴ糖を使って控えめな甘さに仕上げる。
水を入れて混ぜ、
耳たぶのやわらかさにして木型に入れ、
ヒノキのセイロに入れて蒸す。
年降雨量3千ミリを越える海部の山間部からは
海部川や日和佐川などの透きとおる流れが海に注ぐ。
そんな山から伐りだした海部杉の端材をもらってきて、斧で薪割りをする。
レンガのかまどにパチパチと音がし、温かみのある炎が起こる。
このかまどは据え付けてから八十年になる。
実は、一度ガス釜に取り替えようと思ったことがあった。
でも、昔ながらのつくりかたでいいと考え直し、今も薪とかまどを使っている。
二人三脚のういろうづくり、数十年変わることなく
ういろうを作り始めて半世紀。頼まれて催事のお菓子、餅、赤飯などを製造する合間にういろうを手がける。朝から夕方までかけて百本ほどつくる。
ひとくち食べて熱いお茶をいただく。
そうしてまた口へ運ぶ。
素朴なおいしさ、しっとりとしたほのかな甘み。
やわらかくて、ナイフが入りにくいほどだ。
海部杉の香り、レンガのかまどからじわじわと発生する遠赤外線、
清流海部川に育まれた水が、この品の良さをつくりだしているのかもしれない。
照れやのおとうさんと美人のおかあさんが
コツコツ、和気あいあいとつくる小さな土間には、きょうも火が灯っている。
おいしいお茶を水筒に詰めて鶴和商店のういろうを買い、
雄大な大里松原で風に吹かれてみれば、こんな贅沢な休日はない。
鶴和商店/徳島県海部郡海陽町
商品名 「鶴和ういろう」
インターネットなら、「阿波の産直便楽天市場店」で買うことができます。
お時間があれば、お店を訪ねて鶴和のおとうさん、おかあさんと話し込んでみては?
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