モノのあはれ
20年間にわたって使い続けたオーブントースターを
廃棄することになった。
熱の影響で底の鉄板がぼろぼろに腐食し、
火事の危険性が出てきたからである。
機種は松下電器製。

このトースターは大活躍だった。
パンを焼くのはもちろん、
焼き芋、グラタン、もち、ウィンナー(油を摂取したくない場合)など、
家族のあらゆる調理に使っていた。
ボタンを押せば、あとは食卓で新聞、広告を見ながら待つだけ。

鮮やかだったピンクの外装が調理場の油とホコリにまみれ、
底板に穴が空いてゴミ回収車を待つトースターを見ていると
言葉をかけたくなった。
そしてその気持ちを忘れないよう写真を撮った。

モノがあふれている。
使い捨ては良くないと知りつつも
あふれかえるモノを整理するためにヒトは捨てなければならない。
たくさんの生命が生きている地球上で、
うちの家族のために使命を全うし
ゴミ捨て場にたたずむトースターに、
ぼくは頭を垂れた。

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