日本の夏とカルピス〜旬を味わうカルピス沖縄パイナップル
 水玉模様の瓶の蓋を栓抜きで空けて注ぎグチと差し替え、氷を入れたコップに注ぐ。氷に絡まるシロップに上から水を勢いよく落としてかき混ぜる。昆虫採集のセミを眺めながらゴクゴクと喉を鳴らす。誰もが覚えのあるカルピスである。

 地元スーパーの店先でキャンプ用飲料を探していたら、紙パックに入ったカルピス(5倍希釈用)が目に入った。なかでも「旬を味わうカルピス沖縄パイナップル」の文字に惹かれて買ってみた。これは季節限定商品でカルピスに沖縄パイナップルを使用したもの。わくわくしながら買って帰り、(株)きとうむらの「山の湧き水」でさっそく割ってみた。

 口のなかに甘酸っぱい味覚が浸透していく。どこまでがカルピスでどこまでがパイナップルなのかわからない。乳酸菌と南洋果実が溶け合った絶妙の風味。冷蔵庫を空けると、ビールよりもまずこの紙パッケージに目が行く。これだけ楽しませてもらっているのに400円少々で2週間前に買ったのにまだある。季節限定なのでこれは買い込んでおこう。人にはあまり教えたくないなと思いつつ、ホームページに綴る矛盾。

 カルピスのWebサイトに飛んだとき、大人のカルピスともいうべき、「香り立つカルピス、熟成爽麗」がこの夏に発売されたことを知った。低温でじっくり発酵、熟成することで、華やいだ果実的な香りが楽しめるらしい。1本270mlの5倍希釈で350円。さっそく何軒かのスーパーを当たってみたが、徳島ではまた見当たらない。
 
 カルピスのWebサイトはおもしろい。環境報告書を公表していることもわかった。さて、みなさんはカルピスの由来をご存知だろうか。
 後にカルピスの創業者となる20代後半の青年が訪れたモンゴルで遊牧民にもらった甘酸っぱい発酵飲料がきっかけ。それを飲むと胃腸がすっきりし長旅の疲れが癒えたという。
 実際にカルピスが発売されたのは大正8年7月7日の七夕。あの水玉模様は天の川をイメージしている。以下はカルピスのWebサイトからの引用。

<想い出になること、文化になること>
 「カルピス」が発売されて今年で80年。長寿「カルピス」にはエピソードがいっぱいです。発売当初からユニークだった「カルピス」という名前は、カルシウムの「カル」にサンスクリット語の<最上の味>を意味するサルピスとを合わせた言葉。「初恋の味」というキャッチフレーズも一世を風靡。「カルピス」のあの、ほのかなおいしさを言い当てた言葉として、日本中でもてはやされました。
 そして一昨年全国のみなさまから募集した「カルピス」にまつわる想い出話しには、5千通にも及ぶ応募があり、いずれも人生の中にすっかり溶け込んでいる「カルピス」の様子が描かれていました。応募作を審査した脚本家の内館牧子さんは『「カルピス」を通して時代が浮き彫りにされており、単なる飲み物でなく文化』と評しています。

(引用ここまで)

 話の続きはまだある。カルピスは2000年に創業80周年を迎えたが、それを記念して、人々の心の中に埋もれている感動のエピソードや思い出を綴ってもらう「カルピスの想い出」を募集した。寄せられた応募作品は4940通。それらを抜粋して本にまとめたのが「カルピスの忘れられない いい話」 である。

 かつてはこんなCMがあった。
♪ルッフルーン、ルッフルーン ゆきうさぎ 雪降る夜はゆきうさぎ…

 いつしかカルピスを飲まなくなったのか久しい。子どもの飲み物という印象があったためだろうか。それとも店頭でみかけなくなったから? 特に瓶入り希釈はギフト以外見かけなくなったのは冷蔵庫の場所を取るため? 
 それにしても今夏の「熟成爽麗」とか、季節限定のフルーツカルピスのような、ちょっとうれしい商品を出している。アメリカ人にとってコカコーラは特別な意味を持つというが、日本人にとってカルピスは夏を思い出せる飲み物かも。


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