奄美、もっと知りたい
 元ちとせの故郷は、奄美大島。国内を長年旅した知人がこんなことを言っていたことを思い出した。「加計呂麻(かけろま)島)がいい。ぜひ言ってみては」。そういえば、元ちとせは加計呂麻を間近に感じる瀬戸内町の出身だったのではないだろうか。

 奄美といえば、黒糖焼酎、大島紬、アマミノクロウサギ、ハブ、サトウキビ、奄美振興と自然破壊、沖縄と異なる島唄の魅力…。ぜひ一度行ってみたくなった。
 そこで徳島県立図書館で奄美関連の図書をあさっていて発見したのがこの本。

奄美、もっと知りたい〜ガイドブックが書かない奄美の懐」/神谷裕司著
南方新社 1,600円(1997年7月発行)

 著者は朝日新聞の記者。奄美に赴任してきた1994年から数年かけて取材した成果を取りまとめたもの。奄美の歴史、風土から特産品、本土や沖縄との関わり、自然環境、食べ物、島唄などあらゆるジャンルに及ぶ。そのほとんどは固有名詞の付いた取材先から得たもので、全国紙の記者ならではの立場から客観的に問題提起している。
 ほんとうは、それぞれの章だけでも専門書がいくつも存在するところをその入り口として交通整理して1冊にまとめてくれたというべきで、やはりこうした作業は、裏を返せば、外部から見た奄美の人々へのメッセージと思う。大島紬を来て著者と妻が写っている写真にはほのぼのとしたなかに著者の生き方が感じられていい。

 ヤマト(本土)から離れた南日本、とりわけ鹿児島から沖縄にかけての地域情報はなかなか得られない。そんななかで一定の役割を果たしているのが、地元の新聞社や出版社による掘り起こしである。地元に溶け込み、土地の良さも悪さも知ったうえでそれでもペンが走ってしまうような使命感が感じられる。それらは、地元の人にこそ読んで欲しいという。なぜなら、いくら外部から「正しい理論」を持ちこんでも、あくまで地域が自ら気付いて実践していくことしか解決できないことを知っているからだ。

 そうした視点で南九州について書かれた書籍でよかったと思うものを挙げてみる。

◆「屋久島恋泊日記」/古居 智子 (著) 南日本新聞社

 マスコミ関係の仕事をしていた著者がアメリカで出逢った木工職人の夫と屋久島に移住し、島の南部の恋泊(こいどまり)で暮らす日々を綴ったもの。いい生活だと思う。

◆「国が川を壊す理由(わけ)―誰のための川辺川ダムか」/福岡 賢正著、葦書房

 熊本県の球磨川の支流川辺川は、五木の子守歌の故郷を流れる九州一の清流ともいわれる。その川辺川に持ち上がったダム建設計画をめぐり、毎日新聞の記者である著者が独自に建設省と交渉してデータを入手し(請求しても都合の悪いデータはなかなか出てこない)、客観的に分析を重ねながらダム建設の矛盾を暴いていく。ジャーナリズムによる調査報道の成果として評価されている。これは大幅増補した第2版である。
 ぼくは2001年の毎日新聞読者モニター(全国200名)を務めたが、毎日新聞には記名記事が多く、個性的な記者、記事が少なくない。そこが同紙の魅力であると思う。

◆「屋久杉の里」/南日本新聞屋久島取材班 (著) ,岩波書店(1990年)
【目次】
いのち豊か 屋久島の自然/奥岳の風/奥岳の道/山に生きる/豊饒の緑/島で暮らす/緑の村々

 淡々と綴られた文章ながら余韻を残す記述は名著だと思う。残念ながら出版元品切れで今のところ増刷の見込みがない。

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